会社を退職した後、失業手当を受給される方も多いと思います。
私の友人も先日、会社を退職して手続きについて相談がありました。
ハローワークに行って失業手当の手続きをしたんだけど、申請用紙に「アルバイト1日4時間以上・未満か」を記載する欄があって。
何か違いがあるの?
「1日4時間以上・未満か」を基準に、失業手当が減額したり先送りなったりするよ。
詳しく説明していくね。
退職後、失業手当を受け取れるにしても、給付制限があったりと家計が苦しくなることも。アルバイトができたらと思う反面、失業手当の減額・不支給が不安の種に。
今回は失業手当を受け取りながら、アルバイトは可能?の疑問について解説します。
結論は、「失業手当を受け取りながら、アルバイトは可能」です。
ただし、“ 注意事項を確認した上でアルバイトをする ”ということが重要です!
失業手当とは
概要
失業手当とは、雇用保険に加入している者が失業したとき、その所得を保障するために支給されるものです。
失業手当とは、正確には基本手当といい、退職時に失業手当を受けるための基本的な<手順>を簡単にまとめました。
- 退職日までに一定期間以上働いて賃金を得ている
- ①について、会社の証明をもらう
- ハローワークで手続きを行う
- 一定期間ごとにハローワークに通う
雇用保険の加入者の中でも「65歳未満」「65歳以上」に区分されていて、この区分によって失業手当の受け取り方が大きく変わります。
65歳前後の退職で悩まれている方は、こちらをご参考ください。
失業手当の日数
失業手当の日数(=所定給付日数)は、主に3つの区分により決められています。
〈下記は2022年5月時点のハローワークの案内を参照しています〉
①一般の離職者である方
被保険者であった期間 | 10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|
離職時の満年齢 65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
②障害者等の就職が困難な方
被保険者であった期間 | 1年未満 | 1年以上 |
---|---|---|
離職時の満年齢 45歳未満 | 150日 | 300日 |
離職時の満年齢 45歳以上65歳未満 | 150日 | 360日 |
③倒産・解雇等により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた方、または期間の定めのある労働契約が更新されなかったこと(あらかじめ更新されない予定の労働契約が満了したことによる離職を除く)等により離職された方
被保険者で あった期間 | 1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
離職時の満年齢 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
待機期間と給付制限
通常、失業手当を受け取る際には、ハローワークに離職票を提出した日から起算して、「7日間の待機期間」があります。要は、失業している日が7日を経過した後の日から、失業手当を受け取れるということです。
ただし、下記の理由で退職した場合には、7日間の待機期間の後に「給付制限」がかかります。
- 自己都合の場合:3カ月(ただし5年間のうち2回までは2カ月)
- 重大な責任による理由で解雇された場合(重責解雇):3カ月
例えば、アルバイトなどで契約期間満了で退職するケースでは、基本的に7日間の待機期間の後に給付制限なしで失業手当を受け取ることができるのです。
受け取れる期間
失業手当を受け取れる期間(=受給期間)は、特例を除いて「原則として、退職日の翌日から起算して1年間」です。
ただし、受給期間内に、病気・ケガ、妊娠・出産・育児、病人の看護などの理由で、引き続き30日以上働くことができない期間がある場合、延長申請をすることで、最大4年間の延長が可能となります。
受給期間 + 働くことができない期間
(原則1年) (最大3年)
失業手当とアルバイト
失業手当中のアルバイトについては、確認すべきポイントが主に3つあります。
- はじめてハローワークに手続きをした日から7日間の待機期間
=アルバイト可能
ただし“失業しているかの確認期間”のため、通算7日間の待機必須
(1日4時間未満の労働は待機とみなされる / 4時間以上は先送り) - 自己都合退職による2〜3カ月間の給付制限期間
=アルバイト可能(金額申告必要) - 失業手当の受給期間
=アルバイト可能
(労働時間・金額等の申告必要)
ただし勤務状況・収入により減額・不支給、先送りになるケースあり
では、Aちゃんのケースを確認していきます。
- 自己都合退職
- 勤続9年
被保険者であった期間 | 10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|
離職時の満年齢 65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
Aちゃんの場合「待機期間7日間」+「退職理由(自己都合)による給付制限2カ月間」を経て、90日分の失業手当を受け取ることが可能です。
失業手当を受け取るには4週間(28日)に1回、ハローワークで失業認定を受ける必要があります。ただし、失業手当を受け取れる給付期間は「原則、退職日の翌日から1年以内」です。
失業手当に影響する基準
原則として「1日の労働時間が4時間以上」になると、“就職・就労した”とみなされ、失業手当が支給されません。
- 会社に採用され就職した(試用/見習い/講習/研修期間含む)
- 自営業を始めた(準備も含む)
- 会社の役員や嘱託になった
- パート、アルバイトをした
- 日雇労働者として働いた
- 派遣労働者として働いた など
失業手当受給中にアルバイトをした場合には、ハローワークで失業認定を受ける際に提出する「失業認定申告書」のカレンダーに、原則、下記のとおり記載して申告する必要があります。
【4時間以上】=○印(就職・就労)
【4時間未満】=×印(内職・手伝い)
- 週20時間以上
=失業手当は支給されない
(雇用保険加入見込みのため) - 1日4時間以上 / 週20時間未満
=失業手当は支給されない
※就職・就労とみなされ先送り
(受給期間内なら受け取れる)
- 1日4時間未満 / 週20時間未満
=失業手当は支給される
※収入額に応じて減額・不支給あり
上記の注意点を踏まえて、Aちゃんが失業手当受給期間中にアルバイトをした場合の影響について、図を用いて説明していきます。
「1日4時間以上 / 週20時間未満のアルバイト」を行うと、失業認定を行う28日分からアルバイトをした日数分を除いて、失業手当が支給されることになります。
ただし、その除かれた日数は消滅してしまうのではなく、先送りになり、受給期間内(原則として、退職日の翌日〜1年以内)であれば、すべて受け取ることが可能というわけです。
要は「1日4時間以上 / 週20時間未満のアルバイト」は、減額されることなく失業手当全額が受け取れるのです。
失業手当を受け取っている間にアルバイトをすると、減額されたり支給されないっていうイメージがあったけど、注意点を確認しながら働けば、全額受け取れるんだね!
そうそう。必ずしも働いたら失業手当が受け取れなくなるわけではないよ。きちんと注意点を確認しながら働けばいいってこと!
まとめ
失業手当を受け取っている間のアルバイトは、次の注意事項を確認したうえで、行ってください。
ただし、必ずご自身の最寄りのハローワークに確認した上で判断してください。
- はじめてハローワークに手続きをした日から7日間の待機期間
=アルバイト可能
ただし“失業しているかの確認期間”のため、通算7日間の待機必須
(1日4時間未満の労働は待機とみなされる / 4時間以上は先送り) - 自己都合退職による2〜3カ月間の給付制限期間
=アルバイト可能(金額申告必要) - 失業手当の受給期間
=アルバイト可能
(労働時間・金額等の申告必要)
ただし勤務状況・収入により減額・不支給、先送りになるケースあり
+
- 週20時間以上
=失業手当は支給されない
(雇用保険加入見込みのため) - 1日4時間以上 / 週20時間未満
=失業手当は支給されない
※就職・就労とみなされ先送り
(受給期間内なら受け取れる) - 1日4時間未満 / 週20時間未満
=失業手当は支給される
※収入額に応じて減額・不支給あり
なるほど!私の場合は…
7日間の待機期間はアルバイトせず、給付制限期間中・失業手当受給中は “ 1日4時間以上 / 週20時間未満 ”で働くのが良さそうだね!
家庭の状況にあわせて、働き方を検討してみてね!
最近では、政府が「自己都合離職した場合の失業給付の在り方を見直す意向」ということで、動向が注目されていますよね。
“労働移動を円滑化するため”といわれているので、恐らく自己都合退職による給付制限の見直し(短縮 / 廃止等)だと推測されています。
とはいえ、現状のルールが改正されるのはまだまだ先の話。
「失業手当を受け取りながら、アルバイトできるの?」と疑問に思う方も多いはず。
そんな方に、少しでも参考になれば幸いです。
アルバイトをする前には、必ずご自身の最寄りのハローワークに確認してくださいね!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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